民は食をもって天とす 3

彼は、今年2人目の子供が生まれて罰金を払うはめになったといいます。


人口増加に悩む中国は現在、一人っ子政策をとっています。


それを破った者には罰金が科せられます。


彼はその罰金500元を稼ぎに来たのです。


「どうして一人っ子政策を破ったんですか?」


・・・いささか失礼な質問をしてみました。


「上が女の子で、どうしても男の子が欲しかったんだ。


女の子だと力仕事ができないでしょう。


農家には労働力が必要なんだよ」。


「ここ数年の政策で、農家の生活も随分良くなったと聞いているんですが……」


「良かったらこんなところまで出稼ぎに来ないよ。


村にいる女房子供だって借金してなんとか生活しているんだ。


たしかに豊かになった村もあるらしいけど、そんなのほんの一部さ」。

民は食をもって天とす 2

次に、地面に布団をひいて寝転んでいた10人くらいのグループに声をかけてみました。


「皆さんは、ここに何をしにいらっしゃったんですか?」


一番年上に見える50歳くらいの女性が寝転んだまま大声で答えました。


「物ごいをやりに来たんだよ。


北京のほうから流れ流れてきたんだ」。


この女性の村は前年の秋、洪水に見舞われたのだそうです。


ちょうど収穫期だった作物は全滅。


それで、村の仲間と物ごいをして当分の闇食いつなぐことにしたのだといいます。


今度は若者のグループに聞いてみました。


最初に答えてくれたのは20歳前後のジーンズ姿の男、目が大きく愛嬌のある顔をしています。


「仕事は見つかりました?」


「ううん、まだだよ」


「お金を稼いだら何に使うんですか?」


「嫁さんをもらうんだ」。


・・・恥ずかしそうにそう言うと、彼は仲間の後ろに隠れました。


若者たちの足元には鍋と釜が置いてあります。


この広場で自炊をしているのでしょう。


代わってリーダー格の中年の男がしゃべりはじめました。

民は食をもって天とす

内陸部の農村の暮らしはどんな状態なのでしょう。


今回の私たちの取材地は北京、上海、広東省と主に経済発展著しい大都会ばかりです。


そこでは国民一人当たりのGNP(国民総生産)が340ドルという発展途上国・中国の真の姿を窺い知ることは難しいのです。


私たちは、この広場の人々からできるだけ詳しく農村の様子を聞き出すことにしました。


一人目はニッカズボンをはいた中年の男。


河南省から汽車で3旦2晩かけてやって来たといいます。


「仕事は見つかりましたか?」


「1か月前に来たんだけど、まだ仕事が見つからないんだ。


広州市は仕事が見つかりやすいと隣村の人から聞いてきたんだけど、そう甘くないね」。


「村の暮らしはいかがですか?」


「とにかく現金収入がないんだ。ここでひと稼ぎして帰って家を建てようと思っていたんだけど…。


本当はもう村に帰りたいんだけど、帰りの旅費がないんだ」。


都市になだれこむ民衆 3

虚ろな目で地面に座り込んでいる老人、大きな荷物の上に重なり合って死んだように眠っている若者たち、乳飲み子を抱えた母親・・・。


みんな無気力で、テレビカメラを気にする様子もありません。


子供たちが集まってきました。


裸足の子もいます。


小学校2~3年くらいの女の子が私たちに地図を差し出し、買ってくれとせがみました。


通訳の王さんの話では"民工盲流"の子供たちのアルバイトだといいます。


地図を手にとって見ようとしたとき、私服警官が子供たちを追い払いました。


警官の話では、"民工盲流"が1番多いのは2月の旧正月明けだといいます。


旧正月に、地方の村には都会から出稼ぎの農民が帰ってきます。


テレビやステレオなどの±産を持ち帰った彼らは村では羨望の的となります。


そして先発の彼らから都会の景気の良さを聞いた村人たちが、年明けを待って都会に大挙して来るのです。


今年は100万人を超える"民工盲流"が、ここ広州駅に押し寄せてきたといいます。


驚いた当局は特別列車を仕立て、彼らを村に送り返しました。


しかし彼らは懲りずに再びやって来て、いまはもう打つ手がないのだといいます。

都市になだれこむ民衆 2

中国の悪いイメージを伝えるものはできる限り取材してほしくないからです。


何週間にも及ぶ交渉の末、やっと取材許可が下りました。


「財布や時計、機材など盗まれないように十分気をつけてください」。


・・・こう言って私服警官が私たちを先導しました。


万が一を考えて、中国側が3人の警官を取材に付き添わせてくれたのです。


私たちはまず最初に、駅前広場の全景が見下ろせるビルに上がりました。


野球場くらいの大きさの広場はびっしりと人で埋まっていました。


日本ではとてもお目にかかれないほどの混みようです。


人混みの間には幾筋かの細い通路ができていました。


駅を出入りする人の通り道です。


しかし、その通路の周りの人々は動かずにじっとその場所に座り込んでいるのです。


私たちは下に降りて撮影を続けました。


広場には"民工盲流"の人々の猛烈な体臭が漂っていました。

都市になだれこむ民衆

早起きの王さんはこの日、いつものように散歩に出かけたそうです。


場所はホテル近くの広州駅。


そこで記念写真を撮っているときに2人組の少年に襲われ、ポケットの中の財布を奪われたというのです。


幸いなことに王さんに怪我はなく財布の中身も少額でした。


ここ10年の改革開放政策のおかげで沿海地区の都市は経済発展を遂げ、随分と豊かになりました。


しかし内陸部には貧しい農村が依然として多いのです。


そうした農村から、多くの人々が豊かな都市に仕事を求めなだれ込むといった現象がいま、中国各地で起きています。


しかし、出稼ぎ農民の多くは仕事を見つけることもできず流民化しています。石塚孝一氏によると、家も仕事もなく路上に暮らす彼らは"民工盲流"と呼ばれ、深刻な社会問題になっています。


王さんが被害にあった広州駅は広東省の玄関口。


その"民工盲流"の一大たまり場なのです。


私たちは"民工盲流"の実態を探るために、中国側に広州駅の取材を申し込んでいました。


しかし当局は許可を渋っていました。

中国にて 2

ひげを生やした浅黒い男が調査官の前で震えていました。


彼は許可証の偽造の疑いで逮捕されたのです。


名前も住所も印鑑も全部改ざんしています。


「これは悪質だ」


そう言って、調査官は男の持っていたニセの許可書を私たちに見せました。


「僕がやったんじゃありません。本当です。」


男は必死になって弁解し続けました。


取り調べは1時間近くにも及んでいました。


男はついに、それが隣村の人から8元で買ったニセモノであることを認めました。


調査官の話では、不正に入越しようとして摘発される者は、1日100人を超えるといいます。


多いときで、検問所の前には大勢の人がたむろしています。


高収入にひかれ仕事を求めに来た者、華やかな都会をひと目見ようとやって来た者、買い物が目当ての者・・・


みんな諦め切れず何とか街に潜り込もうとスキを狙っているのです。


検問の壁の前に立ちはだかるず民衆と検問官・・・それは私にあの壊されたはずのベルリンの壁を思い出させました。


・・・朝7時、突然の電話のベルに起こされました。


通訳の王さんからでした。


「やられたよ。財布を盗まれた」。


王さんはひどく興奮している様子です。


朝食をとりながら王さんの話を詳しく聞くことにしました。

中国にて

20年ほど前、中国の深圳に行ったことがあります。


検問所では、列を整理するための鉄柵が人に押されてギシギシと音を立てています。


係の人に聞いたところ、1年間に延べ4000万人もがここを往来するといいます。


「こらっ、お前たち。とっとと消え失せろ」。


警官が怒鳴りました。


15~16歳の少年たちが許可書を持たずに通り抜けようとしたのです。


通路の脇では農民ふうの男が3人、警官に一生懸命に何か説明をしています。


聞けば、深馴で働いていた彼らの親戚が交通事故で急死したのだそうです。


その弔いに行きたいので、特別に許可書なしで入れてくれるように頼んでいるのだといいます。


しかし、警官は彼らの申し出をあっさりと断りました。


突然、警官が何か大声で叫びます。


・・・すると、深圳側にいた2人の警官が素早く男の両腕を押さえて取り調べ室へ連行したのです。


いったい何が起きたのかわからなかった私たちはすぐさま後を追いました。


「これはニセモノだ。お前が偽造したのか?」


厳しい口調で調書が男に迫っていました。

為朝伝説の大要

わたしはこの夏に沖縄ツアーで本島を観光しました。


たくさんの史跡などをまわって思ったことは、やはり旅行前にもっとその土地の歴史について勉強しておくべきだということです。


そうすれば旅がより深く楽しいものになるからです。


今日は沖縄の伝説のなかのひとつ、「為朝伝説」について。


為朝の妻はその後、牧那渡で為朝の再来を待ちつつ、尊敦を育てました。


ですから、そこは待港=マチナトというのです。


牧那渡は、いまは牧港と書いて、マチナトと発音しますが、古くは真比港と書き、マヒナトと発音されていたのが、マチナトになったそうです


ですから、待港はこじつけだといわれています。


為朝の遺児尊敦は、幼少にして器量骨格常人と異なり、15歳にして浦添按司となり、22歳で中山王となって、舜天とおくり名されました。


浦添は、牧港のおる浦添村(いま浦添市)で、耕地がひろく、海外貿易でにぎわった牧港をかかえているため、舜天をはじめ、その後の英祖も、察度も、浦添按司から中山王になったのでした。


浦添は浦襲の当て字で、浦々を襲う・・・すなわち国々を支配する意味だといわれています。


ですから、浦添按司はもともと諸按司を支配する「世の主」を意味したわけです。


・・・以上は琉球国の正史に記された為朝伝説の大要ですが、為朝が上陸したという運天港のある今帰仁村では、別の口碑がつたえられています。

男女の思考の特性

今日は男女の思考の特性について。


各人の持つ価値観の中身が、必ずしも論理的なものでないことは、信仰や道徳的確信を考えてみれば明らかでしょう。


ひと頃、何かを主張するのに、「私の独断と偏見によれば…」と枕を振るのが流行しましたが、それにも一応の根拠はあったのです。


しかし、どんな中身の価値観であれ、他人を説得するためには、論理の形で表現されなければなりません。


そして「独断と偏見」と断る場合だって、人は他人の共感と納得を期待してしゃべっているのです。


そのようなものとして論理に注目するとき、とくに近年は、「男の論理・女の論理」と対比する論議が多いだけに、その点を避けて通るわけにはいかないと思います。


ごく一般的な理解でいうと、「男の論理」とは経済優先・成長発展志向の主張であるのに対して、「女の論理」とは福祉優先・保護平等志向の主張といったことになるようです。


これは派遣 千葉で働く女性たちも共感してくれるところでしょう。


しかし、せっかく「価値観の表現としての論理」に注目したのですから、「主張の差」より、もう少し深いところにある「思考の営みの特性」を見分けていきたいと思います。


そのために、いくつかのキーワードがあります。


その一つは「責任」という言葉でしょう。

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